私たちは、あのときのことを思っている以上に忘れてしまっている
絶対見るぞ!と決めていた映画『フロントライン』をようやく観てきました。
映画「フロントライン」は2020年2月に日本で実際に起きた豪華客船、ダイヤモンド・プリンセス号の日本で初となる新型コロナウィルスの集団感染を題材にした作品です。
当時の日本には大規模なウィルス対応専門とする機関は存在せず
(↑ここがまず驚き)
急遽、災害医療を専門とする医療ボランティア的組織DMAT(ディーマット)が対応することになりました。
その出来事を「事実に基づく物語」として映画化。未知のウィルスに「最前線<フロントライン>」で挑んだ人々が描かれています。
私がこの映画を観ている最中も、終わったあとも、本当に強く感じたのは
「私たちは、あのときのことを思っている以上に忘れてしまっている」
ということでした。
https://wwws.warnerbros.co.jp/frontline/
「ああ、あの頃そうだったよね」静かな描写が伝えるリアリティ
映画『フロントライン』は作品レビューなどにも書かれていますが、エンターテイメントとしては、派手さが足りないと感じる方もいるくらい淡々とした描写で物語が進んでいきます。
賛否両論あるのかもしれませんが、私自身は、その淡々とした感じにリアルを感じました。もちろん演じているのは日本を代表するような俳優の方々なので、そこには華やかさを感じましたが(なんたって大好きな小栗旬さんが主演ですし笑)、全くドラマティックではない登場人物たちの表情・言葉に、あの頃の空気がよみがえってくる、そんな感覚でした。
特に、乗客対応に奔走するダイヤモンド・プリンセス号のスタッフ、羽鳥寛子役の森七菜さんの冒頭の登場シーンを観た時には「そうそう、そうだったよね・・」と呟いてしまい、改めて<これは事実に基づく物語なんだ>と思わされました。

「ああ、あの頃そうだったよね」静かな描写が伝えるリアリティ
パンフレット掲載のモデルになった医師やクルーのインタビューは必見
そして、映画の内容はもちろんおすすめなのですが、映画と合わせて手に入れたパンフレットがまたよかった!まだ観られていない方も、映画は観たけど、パンフレットは見てないよ、という方はぜひ見て欲しいです。
パンフレットには、映画の中に登場する医師や看護士、厚生労働省の方や船内クルーのモデルとなった方々のインタビューが掲載されていて、これはフィクションかな?と思っていたことが、実際にあったことだったという内容もあり、最近あまりパンフレットを買わないようにしていたのですが、今回に関しては購入してよかったです。
インタビューは全体的にはとても明るい内容で、前向きな言葉も多かったのが印象的でした。今回の集団感染の現場なんて、ものすごくシリアスに・ドラマティックに作ろうと思えば作れたはずなのに、実際のリアルがこうだったから映画はああなったんだな、ということがよく伝わりました。
使命感を持っている人たちの本当の姿、というのか・・・御涙頂戴じゃない、リアルな現場の方々の本当の覚悟というのか、言語化がうまくできませんが、気になる方はぜひ劇場に!!

パンフレット掲載のモデルになった医師やクルーのインタビューは必見
SNSの怖さと私たちの振る舞い。「正しいこと」って?
映画のなかでは、単に感染症の恐怖だけではなく、SNSやメディアが巻き起こした情報が事態にどう影響したかも描かれています。
誰もが情報を発信できる時代、正しい情報もあれば誤まった情報や偏った意見が混ざり合い、瞬く間に拡散されていきます。
映画では、現場で必死に戦う医療従事者や関係者の立場が、SNSでの憶測や非難、誹謗中傷によってさらに苦しくなる様子が描かれています。
私自身も、あの頃はSNSを通じてさまざまな情報を見聞きし、必要以上に不安を感じ、時には精神的に不安定になってしまったことがありました。
自分では「正しい」と思い、良かれと思っての言動が、知らず知らず誰かを傷つけていたのかもしれない。新型コロナウィルス以外のことでも、そのとき正しいと思ったことが、後になって間違いや偏見だったと気づくことも多々あります。
改めて、情報を受け取る時にも発信する時にも、高い視座で広い視野をもち、まずは事実と冷静に向き合うことの重要性を痛感しました。
SNSに限らず、デジタルツールは私たちの生活を良くも悪くも大きく変えました。とても便利でなくてはならないものである一方で、使い方次第では人の心を傷つけ、たったひとりの一つの行動が、簡単に世界に混乱を招く怖さも持っています。
情報の取捨選択はもちろん、「相手を思いやる気持ち」と「想像力」が、私たち一人ひとりに求められているのだと思います。
新型コロナから、もう5年?たったの5年?遠く感じるあの頃
2020年は、ほんの5年前です。それなのに、あの頃の空気や出来事が、ずいぶん遠い記憶になっていることに驚きました。
マスクが手に入らず、誰かの咳に過敏になって外出をためらった緊張感。ぶつけようのない怒りと、先の見えない不安に潰されそうだった日々。
もっと行きたいところに行っておけばよかった、
やりたいことをやっておけばよかった、
会いたい人に会いに行っておけばよかった。
このパンデミックが終わったら。元の生活に戻れたら。
あんなことやこんなこと、今度こそ絶対にやろう!

新型コロナから、もう5年?たったの5年?遠く感じるあの頃
あたり前の日常が、マスクをせずに笑って誰かとご飯を食べられる日々が、こんなにも有り難いものなのだと、日本中の人が、世界中の人が痛感したはずなのに。
少なくとも今の私はそんな思いをすっかり忘れてしまっていました。
今だから観るべき、忘れてはいけないことを思い出させてくれる映画
映画『フロントライン』は、これが「正解」という答えを示すような映画ではありませんでした。
「あなたはこの頃、何を感じてた?何をしていた?」
と問いかけられていたような、、、個人的にはそんな感覚です。
きっと、誰もが納得できる正しい答えなんてなかった。でも、あの未曾有の出来事を決して忘れないこと、そして何が正しかったのかを考え続けることが、いつかまたきっと起こる困難に向き合うためのヒントになるのではないでしょうか。
本当に心が壊れてしまうような辛い出来事は、立ち直るために忘れた方がいい場合ももちろんあると思います。それは人が生きていくために必要なことだと思う。
だから、運よく心を保てた人たちは(今回で言えば少なくとも私は)、しっかりと覚えていなければいけないし、伝えていかなければいけない。そうやって生きていかなきゃと。そんな風に思わされました。
あの時も、そしてきっと今も、私の知らないところで最前線に立って何かと戦ってくれている人たちがいる。そのことを決して忘れてはいけないし、改めて、増本プロデューサーが言われている「最前線の名もなき人々への感謝」の気持ちを持ち続けたい。そんな思いも込めて、今回の記事を書きました。

今だから観るべき、忘れてはいけないことを思い出させてくれる映画
とにかく、「観ようかな、どうしようかな」と思っている人はぜひ見て!!私はもうあと2回は観たいなと思ってます^^
そうそう、特別上映で英語字幕版があるそうです!
東京・大阪・京都の映画館にて英語字幕版上映が7月4日(金)から7月10日(木)1週間限定で決定!上映劇場など詳細は下記リンクから確認できます。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。